Touching the Depths of the Earth with One Note
(一音で地球の底まで行って帰ってくる)
[2019, U.S.A.] site-specific performance
六面の箏と5人のパフォーマーたちによる観客参加型のパフォーマンス作品。日米カルチュラル・トレード・ネットワーク(CTN)の委嘱を受け、日本にルーツを持つサンフランシスコ・ベイエリアの住民たちとの対話を経て、種の移動とディアスポラについて非・人間中心主義的な視点から考察する作品を創作し、サンフランシスコ国際芸術祭のメインプログラムとして発表した。会場となったフォート・メイソン・センターは元米軍基地であり、第二次世界大戦中はここからアジア各地に向けて軍艦が出航した。現在は国立保養地の一部となっており、9500万年前の地形を留める貴重な自然環境でもある。観客は、風や岩と共鳴する箏に導かれながら、会場の歴史的建築物や屋外を移動し、時にレクチャーや朗読、パフォーマンスに耳を傾け、時にサウンド・ワークショップの参加者となり、最後には自身の記憶の中の音を聴くことで、自らの音楽体験を作っていく。歴史学者や生物学者、植物学者の協力のもと、その土地の複層の時間を掘り起こし、そこに渡ってきた人々や植物の種、鳥たちの物語——もう聴くことができなくなったサンフランシスコの霧笛や、冒険家が太平洋を航海中に海上で聴いた音、一人の日系人の移住と強制収容の歴史、在来植物の種子たちの旅、そして北極の氷が溶けたことで地球の反対側に迷い込んでしまった渡り鳥の求愛の歌——が時代を超えて交差するような作品となった。
出演:Koa Weaver 佳奈(語り)、近藤愛助(パフォーマンス、美術)、土居由理子(朗読、歌)、日景晶子(箏)、樅山智子(語り、打楽器)
上演:2019年5月23日、25日、26日
会場:フォート・メイソン・センター(アメリカ、サンフランシスコ)
委嘱・主催:日米カルチュラル・トレード・ネットワーク(CTN)、サンフランシスコ国際芸術祭
Meirin Attunement Room(明倫調律室)
[2018, Japan] installation
自身を調律するための体験型インスタレーション作品。インドネシア、オーストラリア、および日本のアーティストたちが京都に集まり、音や楽器に焦点をあてた滞在制作を行うコラボレーション・プロジェクト「The Instrument Builders Project Kyoto: Circulating Echo」から委嘱を受けて発表した。中川真氏の著書『平安京 音の宇宙』よりインスピレーションを得て、調律された都市の中で——聴取を通して——自分が世界のどこにいるのかを知るような感覚を想像するための装置として創作した。雅楽奏者や絃の製造者らの協力のもと、京都在住の陰陽師と協働し、京都芸術センター茶室内の東西南北および中央のそれぞれの方角に、呼応する調子の音叉や神獣のシンボル、色や言葉などを置き、陰陽五行説に基づいた一つの音宇宙を構築した。東西南北に座った観客は、音叉から聞き取った音を自ら声にして空間に放つ。中央に寝転んだ観客の身体は、部屋と共鳴する琴の胴体となり、各方角から聞こえる音との関係の中で自らを調律しながら絃を奏でる。つまり、この部屋そのものが楽器となり、この部屋を演奏する観客の身体もまた楽器となる。『明倫調律室』を複数人で演奏するために、「柄杓を一回鳴らしたら奏者たちは一斉に方角を移動する」などいくつかの遊びのルールを設け、異なる奏者によるパフォーマンスを複数回行なった。
初演・会場:2018年9月16日 京都芸術センター
共同制作者: 樅山祥子、糺命、ヴキール・スヤディ、 ミスバッフ・デーン・ビロク、ケイトリン・フランツマン 協力: 伊藤えり(笙奏者)、株式会社 鳥羽屋、無鄰菴、 岡山コケの会、モアレ
委嘱:The Instrument Builders Project Kyoto: Circulating Echo(ザ・インストゥルメント・ビルダーズ・プロジェクト・キョウト-循環するエコー)
Conversations with Birds, Dead Birds, and Cracks in the Stone
(鳥たち、死んだ鳥たち、そして石に刻まれた罅との会話)
[2017, Croatia] site-specific performance
Perforacije Festivalの招聘により、クロアチアの詩人でダンス・ドラマトゥルクのミラ・パヴィチェビッチと共作した散歩パフォーマンス。クロアチアのドゥブロヴニクからザグレブ、そしてセルビアのノヴィサドを巡る2週間のレジデンシーを通して、ミラと私が互いに対してワークショップを重ね合い、「異なるリアリティを持つ二人の個人が、どのようにしたら本当に対話することができるのか」ということを、徹底的に、真摯に、そして親密であることにあくまでも忠実に、追求する実験を行った。それは、個人間の対話が、必然的に、戦争や震災などの共同体の体験や、未来の記憶、目に見える存在も見えない存在も巻き込ながら深化する中で、「ホーム」とは何なのかを一緒に考える旅であった。そのプロセスの最後に、ザグレブ市街の真ん中にひっそりと佇む公園で、音のワークショップを含む参加型のパフォーマンスを行い、二人の対話を公に開く場を設けた。観客たちの記憶をガイドに、公園の噴水やブランコ、木の切り株などが、時に神戸の井戸や、ノヴィサドの壊れた橋、ドゥブロヴニクの市場などに変容し、色々な次元の時空を共に発見するような体験となった。
初演・会場:2017年12月21日 Rokov perivoj公園
委嘱:Perforacije Festival
On This Side, a Spirit(こなた精霊)
[2017, Japan] concert music
二台ピアノのための「こなた精霊」は、今年5月に訪ねた愛媛県大三島の大山祇神社に伝わる一人角力(ひとりずもう)の調査をもとに作曲しました。一人角力は、稲の精霊と人間が相撲を取る神事で、精霊が勝つことによって、春には豊作が約束され、秋には収穫を感謝するというものです。古くから伝わる行事ですが、一時期途絶えていて、20年ほど前に地元の人たちによって復活されました。
「こなた精霊」では、二人のピアニストに、行司にも、力士にも、神様にもなりながら、遊んでもらいたいと考えました。大三島町には、一人角力とはまた別に、「すもとり節」という座興歌が伝わっています。「こなた精霊」では、神様が相撲でひとしきり遊んだ後、「すもとり節」を口ずさみながら神様のおうちに帰っていく様を想像しました。
Rite of Masago(真砂子ノ儀)
[2016, Japan] concert music
さいたま市の岩槻には、全国でも大変珍しい「古式土俵入り」という芸能が残っている。これは、相撲をとる前の土俵入りの行為のみを様式化した地域の子どもたちの祭りである。化粧まわしをつけた子どもたちが、金棒を突き鳴らし、拍子木を叩きながら、地域を行進し、振りのある動きで土俵に入り、掛け声とともに大地を踏みしめる。夏に子供たちの稽古を見学し、秋に「古式土俵入り」の本番を体験した。透き通った青空 のもと、彼岸花が咲き誇る神社で行なわれたその儀式は、あまりにも清らかで神々しく、あまりにも素朴で美しく、私は涙を流しながら、その音楽を聴いたのでした。岩槻の古式土俵入りから教わったことを少しでも多くの人と共有したいと思い、「真砂子ノ儀」を書きました。
初演:2016年4月2日、岩槻本丸公民館にて(さいたまトリエンナーレ)
チェロ:多井智紀 太棹三味線:田中悠美子 ピアノ:野村誠 協力:観客のみなさん
CONVERSATIONS WITH MYSELVES: Recollecting the 10 years of Minori-Majorite Travel
(記憶との対話〜マイノリマジョリテ・トラベル、10年目の検証)
[2016, Japan] Film
樅山が主宰をつとめるマイノリマジョリテ・トラベルが、身体障害、精神障害、性同一性障害、セクシュアル・マイノリティ、元ホームレス、外国籍など様々なマイノリティ性を自覚するメンバーたちとともに、2005年から2006年にかけて実施した「東京境界線紀行」プロジェクトを、10年後の世界から振り返る検証映画。2016年3月渋谷アップリンクでのプレミア上映以降、全国各地で上映を重ね、それぞれの文脈に照らし合わせながら現在の日本社会における「障害」と「健常」の境界線を再考する対話を継続している。
監督=佐々木誠
制作総指揮=樅山智子
製作=マイノリマジョリテ・トラベル・クロニクル実行委員会/61分
Subli ng Karagatan: a Chant for the Sea Forest(海の森のスブリ)
[2015, Philippines] site-specific performance
環境破壊の危機にある海に向かって音楽を奉納する30分の儀式パフォーマンス。第33回アジア作曲家連盟フェスティバルの招聘を受け、レジデント・コンポーザーとしてフィリピンのバタンガス州に滞在し、地元の高校生たちや、地域の伝統芸能 “Subli” を継承する高齢者たち、環境活動家などと協働しながら創作した。世界各地から音楽祭のために集まった観客たちが演奏者となり、目の前の海に住む多様な生物になりきって声を重ねることで、沈黙のサンゴ礁の中であらゆる命が迷子にならないように祈りを捧げた。
楽器編成:太鼓、カスタネット、声
演奏:シナーラ・スブリ・ダンサーズ (Luisita M. Abante, Severino D. Cruzat, Beda M. Dimayuga, and Neri G. Manalo)/セント・ブリジット大学付属高校パフォーミング・アーツ・グループ「SBC-PAO Repertory Brigid」 (Jan Jilliene M. Alday, Rhainne Cshyra M. Dimatatac, Veronica Mae E. Lalusin, Drecz Alecz A. Maderazo, Wendhyl M. Manalo, Michelle C. Marqueses, Ma. Zshalia Eleni M. Muñoz, Ma. Gloria Isabelle N. Pechay, Carl Joshua B. Seno, and Angela Denise S. Viceral)/
アジア作曲家連盟フェスティバルのコンサートに来場した観客たち
初演・会場:2015年11月 ライヤ・ビーチ (サン・フアン、バタンガス、フィリピン)
委嘱:第33回アジア作曲家連盟フェスティバル「Likha-Likas: Reconfiguring Music, Nature, and Myth」
Where Little Foot Sleeps(リトルフットの墓)
[2015, Japan] concert music
東京、両国アートフェスティバルの委嘱で二台のプリペアド・ピアノのために作曲。2015年7月に両国門天ホールで井上郷子氏とジル・リチャーズ氏によって初演された。狩られる存在であった人類の祖先たちの生活と、南アフリカ先住民サンの狩猟採集にまつわる儀礼と、日本は岩手・大槌の鹿子踊の哲学を巡って、ヒトと動物の関係について考察した楽曲。
(以下、プログラムノートより一部抜粋)
昨年、南アフリカUnyazi電子音楽祭の招聘でヨハネスブルクに滞在した際に、人類の祖先たちが多数発掘されている化石遺跡群「人類のゆりかご」で、リトルフットに出会いました。今年4月に発表されたばかりの新たな測定結果によると、リトルフットは370万年前の猿人の成人女性で、発見されているヒト科動物では最古の化石となります。水の音が静かに響く暗い洞窟の中、高さ20mの垂直の穴の底で見つかったリトルフット。もしかしたら、樹冠に覆われた森の奥で捕食動物から逃げているうちに洞窟に落ちてしまい、動けないまま亡くなっていったのかもしれません。耳の後ろにきゅっと丸めた小さな手をあてて眠る彼女の表情は、泣いているようにも、怒っているようにも、笑っているようにも見えました。あるいは、370万年後の未来の記憶が走馬灯のように駆け巡り、サン族の治療歌を聴いてエランドの精霊と対話し、動物と人間が境界線上で遊ぶ鹿子踊の夢をみているのでしょうか。
楽器編成:プリペアド・ピアノ二台
演奏:井上郷子&ジル・リチャーズ
初演・会場:2015年7月 両国門天ホール(東京)
委嘱:第1回 両国アートフェスティバル2015
Searching for the Sound of Taji(田治の音を探ろう)
[2014, Japan] site-specific performance, sound walk concert
福井県福井市の田治地域協議会から委嘱をうけ、米どころとして知られる東郷田治地区に一ヶ月間滞在し、子どもから高齢者までの幅広い年齢層の地域住民とともにワークショップ「田治の音を作ろう」を開催。植物学者や考古学者と一緒に地域の特性を調査し、忘れられていた土地の伝説や風習を掘り起こし、地元の竹で子どもたちと楽器を創った。田治地域協議会主催「花と食と音のアートフェア」にて、地域全体を舞台として住民が総動員で演奏を繰り広げる散歩型コンサート「田治の音を探ろう」を創作演出。公演当日、観客は、田んぼや周囲の山々、森の泉や古い神社、寺や庭を巡って集落を散策した。太鼓、吹奏楽、雅楽など、その土地に伝わる音、そしてその周りの環境の音に耳を澄ませながら土地の歴史を紐解いてゆく、サイト・スペシフィックな音楽パフォーマンスとなった。
楽器編成:太鼓、竹創作楽器、ピッコロ、ユーフォニウム、ホルン、フリューゲルホルン、マリンバ、半鐘、詩吟、テープ、雅楽、ソプラノ・サックス、オカリナ、女声コーラス
演奏・出演:福井市東郷田治地域の住民、ふくいWind Brass、三国シンフォニックウィンズ、福井県立大学水口研究室ほか。
初演・会場:福井市栃泉町、深見町(福井)
委嘱:田治地域協議会
When Humans Go Extinct(人類が絶滅するころに)
[2014, Republic of South Africa] concert music, multi-media performance
[New Music南アフリカの招聘でUnyazi2014電子音楽祭にレジデント・コンポーザーとして参加し、ヨハネスブルグ在住のアーティスト、ジル・リチャーズ(ピアニスト)、ジョアオ・オレキア(サウンド・アーティスト)、ヤーヘン・ミークル(映像作家)との恊働プロジェクトを企画した。ウィットウォーターズランド大学のオリジンズ・センター博物館、ロック・アート研究所、そして地球物理学部の協力のもと、考古学者や地層学者らとともに人類の祖先の化石遺跡群である洞窟「人類のゆりかご」を訪ね、最先端の研究について教えてもらい、先史時代の楽器ロック・ゴングを演奏。それと平行して、ヨハネスブルグ周辺で鉱山開発の公害に苦しむコミュニティを訪ねて住民や活動家らとの意見交換を行い、坑道が張り巡る地中から聴こえてくる音についての聞き込みを行った。鉱山にまつわる踊りや音楽について調べ、各地で地震センサーを用いて地中の振動を録音。これらのリサーチをもとにピアノとライブ・エレクトロニクスと映像のためのマルチメディア・パフォーマンス作品「When Humans Go Extinct(人類が絶滅するころに)」を作曲し、参加アーティストによる演奏で発表した。人類発祥の頃の洞窟と近代の遺産である鉱山を巡って、人々と大地との関係について考察し、私たちはどこから来たのか、私たちはどこに来たのか、私たちはどこに行くのか、という問いかけをした。
楽器編成:ピアノ、ライブ・エレクトロニクス、映像プロジェクション
演奏:ジル・リチャーズ(ピアノ)、ジャオ・オレキア(コンピューター)、ヤーヘン・ミークル(映像)
会場:ウィットウォーターズランド大学(ヨハネスブルグ、南アフリカ)
初演・会場:2014年9月 ウィットウォーターズランド大学(ヨハネスブルグ、南アフリカ)
委嘱:Unyazi2014電子音楽祭
Calling from a Changtang Steppe(チャンタンの高原から)ほか
[2014, India] site-specific performance, sound installation
Earth Art Project 2014芸術祭の招聘で、標高3700メートルから5000メートルのヒマラヤの高地に滞在し、2つの公立学校にて生徒や先生たちとの恊働プロジェクトを企画した。温暖化の影響や無計画な開発によって環境が急激に変化しているラダック地方において、遊牧民や農民の子供たちと一緒に大地から受け取っている様々なサインをドキュメントし、音楽に翻訳するワークショップを実施した。山から返ってくる木霊や強風によって演奏されるボトルのオルガンなどを用いて、環境要素を活かしたパフォーマンス作品を創り、子供たちの演奏で発表した。また、それぞれの学校にて、観客がヘッドフォンで鑑賞するサウンド・インスタレーション作品を発表した。
楽器編成:創作楽器、太鼓、ベル、チベットギター、声、ほか
演奏:ナング・ミドルスクール、及びノマディック・レジデンシャルスクール・プーガの生徒たち
初演・会場:2014年7月 ナング・ミドルスクール、8月 ノマディック・レジデンシャルスクール・プーガ(ラダック、ジャンムーカシミール州、インド)
委嘱:Earth Art Project2014
Moons of Hidden Times(ほのみえる時層の月たち)
[2013, Mexico] concert music
「タンブッコ=日本人若手作曲家メキシコ・レジデンシー・プロジェクト」の招聘を受け、メキシコ・シティ、及びハラパに創作滞在し、タンブッコ打楽器アンサンブルとの恊働作業を経て新作を発表。アンサンブルのメンバーたちと共に互いの心象風景を巡りあい、音楽の始原を探求するワークッショップから「意図を持つ音」を引き出し、それらを編み込むことによって「Moons of Hidden Times(ほのみえる時層の月たち)」を作曲した。タンブッコ打楽器アンサンブルの演奏で、2013年3月9日メキシコ・シティにて世界初演、7月3日東京にて日本初演され、以降、世界各地で再演されている。
(以下、プログラムノートより)
しとしとと雨が降る朝、ハラパ郊外の熱帯雨林にひっそりと佇む川沿いのスタジオで、タンブッコとの旅は始まりました。耳をそばだてている沢山の楽器に囲まれながら、私たちは座り、それぞれが過去と未来の記憶について話し、それぞれの恐れや葛藤に触れ、それぞれの月の光を探しました。トラックに乗って険しい山を走り、沈黙の寺に流れる川を泳ぎ、出会った神々の道案内をし、毎朝豚に食べられて、夢の色を聴く。こうした心風景を巡るワークショップを通して、タンブッコのメンバーたちと共に意図を持つ音を探し、それらの音を私が織り合わせて作曲した旅の記録が「Moons of Hidden Times」です。タンブッコという共同体の中に私という外の存在が介入することによって、普段とは違う視点で対話が起こり、私たちにとっても、そしてメキシコと日本の観客にとっても、懐かしいと同時に新鮮なリアリティをもつ音楽を創ることを目指しました。
楽器編成:打楽器アンサンブル
演奏:タンブッコ打楽器アンサンブル
日本初演・会場:2013年7月 津田ホール(東京)
委嘱:タンブッコ打楽器アンサンブル
At a Meeting of Microcosms(ミクロコスモスが重なる場所で)
[2013, India] site-specific performance
「土のつわもの~プロマイノリティ・レジデンス~」の招聘で、インド西ベンガルの先住民であるサンタル族の村に滞在。シアラ村には水道もガスもなく、人々は昔からの方法で自然と共存して生活してきた。しかし、数年前から村に電気が通り、携帯電話やテレビも普及しはじめ、これまでとは異なる情報や価値観が入ってくるようになって、生活は急速に変化している。そのシアラ村で、音楽を通して対話するワークショップを重ね、サンタルの人々とともに生活した。滞在の最後、田植え前の田んぼに日常と非日常の音を置いて曼荼羅を描き、村人たちとともに今この瞬間の村の音を慶ぶパフォーマンス儀式を創作し、共有した。
楽器編成:足踏式脱穀機、手箕、太鼓、携帯ラジオ、 鍵盤ハーモニカ、声、ほか
演奏:シアラ村の住民、動物たち
初演・会場:2013年2月 シアラ村(西ベンガル、インド)
委嘱:土のつわもの~プロマイノリティ・レジデンス~
I Saw Time, under a Cherry Tree(桜の木の下で、時をみた)
[2012, France] electro-acoustic music
2011年3月11日の東日本大震災以降続いている福島第一原子力発電所事故の状況をうけて、フェスティバルFUKUSHIMA!と連動し、フランスのラジオ局ネットワークの呼びかけによって始まった福島オープン・サウンド。そのプロジェクトによる委嘱で、ラジオのための電子音響音楽作品「桜の木の下で、時をみた」を発表。東京を出発し、福島、パリ、ジュネーブを巡って東京に戻るまでの旅のフィールド録音を用いて作曲した。福島では古謡「かんちょろりん」が生まれたといわれる南相馬のバッカミキの森を訪ね、フランスではパリの樹々とともに福島で起こっていることについて話し合い、それら樹々の内部の声を録音して曲中で使用。パリのフランス国立視聴覚研究所音楽研究グループ(INA-GRM)、及びジュネーブのUtopianaレジデンシー・プログラムに滞在し、各地のエンジニアの協力を得て実現した。「桜の木の下で、時をみた」は、オンライン上のサウンド・ライブラリーのほか、日本、オーストラリア、中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ各地のラジオ局やフェスティバルで放送されている。
放送:2013年3月 Fukushima Kitchen Garden(福島)、5月6月 ラジオ・フランス(パリ、フランス)、9月 RTS(ジュネーブ、スイス)ほか
委嘱:福島オープン・サウンド・プロジェクト
The Zoo, the Ship, and the Beggar(動物園と船と物乞いのお話)
[2012, Indonesia] site-specific performance
文化遺産と考古学、宗教、そして神話との関係性をテーマに掲げる国際芸術祭「Sharing Art Garden and Festival of Ocean Mountain Arts」より招聘を受けて、国際交流基金ジャカルタ日本文化センターの支援のもと、第一回芸術祭の開催地であるボロブドゥールに3週間滞在して創作活動を行った。ボロブドゥール寺院の目の前にある多宗教の幼稚園にて、様々な事情を抱える家族の子供たちとともに、庭としての寺院を取り戻すワークショップを実施。子供たちの声とバイオリン・デュオのための「動物園と船と物乞いのお話」を作曲した。芸術祭の公演プログラムの一部として4月28日にボロブドゥール寺院の野外舞台で子供たちの演奏により発表され、公演後の5月4日にニューヨークの音楽NGOであるFound Sound Nationの監修でレコーディングが行われた。
楽器編成:声、バイオリン・デュオ
演奏:ブミ・インドリア幼稚園の子供たち(声)、イルガ&バンキット・ストポ(バイオリン)
初演・会場:2012年4月 ボロブドゥール寺院(マゲラン、インドネシア)
委嘱:Sharing Art Garden and Festival of Ocean Mountain Arts
Code Purnama Hatiku(私の心を照らす満月のチョデ)
[2011, Indonesia] site-specific performance
APIアジア地域プロジェクト「人類生態学的平衡のためのコミュニティ・イニシアティブ」の招聘をうけ、ジョグジャカルタ市のNGO団体Pemerti Kali Code共催のもと、噴火・洪水被災者との共同作曲ワークショップ・コンサートを企画。2010年末のムラピ山噴火以来、チョデ川流域では村によって被害や復興支援が異なり村同士の衝突が起きているため、コミュニティのエンパワメントが急務であった。特に洪水被害が大きい川沿いのスラム地域の住民とともに、上流から下流まで互いの家を訪ねあう旅を経て、 20分の音楽作品「Code Purnama Hatiku(私の心を照らす満月のチョデ)」を共同で作曲。公営住宅団地の建物を活かした川沿いの野外舞台にて、地域住民のほか政府関係者やマスメディアを含む観客を交え、ワークショップ参加者の演奏で発表した。コンサートの結果、噴火被災後の復興にむけてチョデ川流域のコミュニティとジョグジャカルタ政府、そして大学などの教育機関が協働することを確認する覚書が取り交わされ、以降対話が継続している。
楽器編成:声、クントンガン、アンクルン、創作楽器、ギター、鍵盤ハーモニカ
演奏:チョデ川流域の住民たち
初演・会場:2011年2月 ジョゴユダン村(ジョグジャカルタ、インドネシア)
委嘱:APIアジア地域プロジェクト「人類生態学的平衡のためのコミュニティ・イニシアティブ」
CANDIES~girlish hardcore
[2010, Japan] theater
指輪ホテル・羊屋白玉演出による舞台作品「CANDIES~girlish hardcore 2010」及び「CANDIES 2011 chapter 1:Kitty」の音楽を、スカンク、船橋陽とともに担当。
©YUBIWAHotel 2012 撮影:畑瀬邦彦
A Cave Dream(洞穴の夢)
[2010, The Nederlands] concert music
古楽アンサンブルniwebyrthの委嘱によりフォルテピアノ、チェロ、ピリオド・クラリネット、ソプラノのため「A CaveDream(洞穴の夢)」を発表し、古楽作曲コンクールで優勝した。
楽器編成:ソプラノ、フォルテピアノ、チェロ、ピリオド・クラリネット
演奏:リリス・ベルへルスト(ソプラノ)、トゥリア・メランドリ(フォルテピアノ)、アントン・ババ(チェロ)、ソーレン・グリーン(ピリオド・クラリネット)
初演・会場:2010年2月 コルゾー劇場(デン・ハーグ、オランダ)
委嘱:niwebyrth古楽アンサンブル
A Song Pouring(そそぐうた)
[2009, The Nederlands] audience participatory sound and visual installation
カメラ・ジャパン映画祭主催による日蘭グループ展「Kappalai」の委嘱をうけ、濱野貴子(美術家)とともに観客参加型の音響空間インスタレーション作品「A Song Pouring」を共作発表した。観客は、歴史的な船舶の寝室にて公共と私的な空間の境界線上に横たわり、未来の記憶へ秘密の歌を注ぐ。ロッテルダム海事博物館で展示をオープンしたあと、ライデン日本博物館シーボルト・ハウスに巡回し、異なる空間のために再演出した。
初演・会場:2009年9月 ハーベン・ミュージアム(ロッテルダム、オランダ)、11月 シーボルト・ハウス(ライデン、オランダ)
委嘱:カメラ・ジャパン映画祭Kappalai展
Mesujika DOE(雌鹿DOE)
[2009, Japan & U.S.A.] theater
日米国際演劇プロジェクトにドラマトゥルクとして参加。社会、そして自然界の他者との関係から自己の核心を獲得するための戦いを、異言語や異文化間を行き来しながら描くプロジェクト。トリスタ・ボールドウィン(戯曲家)と羊屋白玉(演出家)をはじめ、日米の役者・スタッフとともに創作に携わった。2009年から複数年にわたるリサーチとワーク・イン・プログレス公演を経て、複層のストーリーテリングを通して両国の観客に字幕なしで語られる作品を発表した。
Photo: Rich Fleishchman
会場:2010年8月プレイライツ・センター(ミネアポリス、アメリカ)、2011年7月 シアター・オブ・ユーゲン(サンフランシスコ、アメリカ)、2012年1月 森下スタジオ(東京)ほか
主催:指輪ホテル
Ballade for Lost Waters(迷子水のバラード)
[2009, The Nederlands] concert music, multi-media performance
オランダ社会における人と自然環境との関係を考察するため、「生きている水」を探してハーグの街を旅し、その旅の経験からパフォーマンス作品を創るプロジェクトを企画実施した。メリッサ・クルーズ(美術家)とヤミラ・リオス(電子音楽家)に参加を呼びかけ、ハーグ市政府、及びオランダ水路管理局の協力を得て企画を実施。水中マイクを携えて、アクセスが制限されている市内の様々なロケーションを巡り、普段は聴こえてこない水の声に耳を傾けた。ハーグ市海岸の潮の満ち引きのデータから音を創り、録音された水中の音を編集したテープとライブ・エレクトロニクス、そして打楽器奏者のための「Ballade for Lost Waters(迷子水のバラード)」を作曲した。
2009年4月24日、オランダ王立ハーグ音楽院スプリング・フェスティバル2009にて、メイ・イー・リー(打楽器)とヤミラ・リオス(ライブ・エレクトロニクス)による演奏で発表され、以降ハーグ市内の各地で再演を重ねた。
楽器編成:アンティーク・ティンパニ、アンティーク・シンバル、グロッケンシュピール、声、水、テープ、ライブ・エレクトロニクス
演奏:メイ・イー・リー(打楽器)、ヤミラ・リオス(ライブ・エレクトロニクス)
初演・会場:2009年4月 キース・バン・バーレンザール(デン・ハーグ、オランダ)
Lullaby of the 21st Century(21世紀の子守唄)
[2008, Japan] concert music, site-specific project
金沢21世紀美術館の「荒野のグラフィズム:粟津潔」展関連事業として、4日間の共同作曲ワークショップ「次元を跨ぐ旅〜地図から生まれる音楽」を企画。一般公募で集まった20代から70代までの世代も国籍も音楽経験も異なる7人の金沢市民参加者とともに粟津潔展を廻り、心の揺れを記号化する対話から共同で一つの音楽「21世紀の子守唄」を作曲。美術館を舞台に参加者の演奏で公演を行った。
©hiraku ikeda
楽器編成:ピアノ、テルミン、アルト・サックス、大正琴、リコーダー、オカリナ、創作楽器、声
演奏:「次元を跨ぐ旅〜地図から生まれる音楽」ワークショップ参加者&樅山智子
初演・会場:2008年1月 金沢21世紀美術館(石川)
委嘱:公益財団法人 金沢芸術創造財団
Y/i : feeling out of harmony in Yokohama(和・違)
[2007, Japan] concert music, site-specific project
横浜みなとみらいホール2006年度レジデンス・アーティストとして、鶴見幸代(作曲家)と三橋圭介(音楽評論家)と共に「はまみっくす=ヨコハマ+リミックス」プロジェクトを企画。公募で集まった7歳から56歳までの横浜市民の参加者が、樅山、鶴見、三橋担当の3グループに分かれ、1ヶ月にわたる創作活動を行った。樅山グループは、複数の視点から横浜を巡るフィールドワークを実施し、埋立地のみなとみらいから船で出発して、海から山下公園にて上陸、中華街から線路を跨いで、寿町を訪ねた。華僑3世やホームレス活動家など、各地で地元の人々と話し合い、参加者一人一人の心の揺れを掬い上げ、メンバー全員が共同で一つの曲を作曲した。各グループのワークショップから生まれた様々な要素を、レジデンス・アーティストの樅山と鶴見がリミックスし、新作として書き下ろした。これらのグループ作品とリミックス作品は、プロの音楽家とワークショップ参加者による演奏で横浜みなとみらいホールにて発表された。
楽器編成・演奏:阪本剛二郎(三味線)、神田佳子(打楽器)、今込治(トロンボーン)、Ayako(Halo)(歌)、斎藤徹(コントラバス)、末永千湖(ヴァイオリン)、鶴見幸代(カセットテープ、笛)、三橋圭介(カセットテープ、リコーダー)、内山和重(カセットテープ、ティンシャ)ほか
初演・会場:2007年3月 横浜みなとみらいホール(神奈川)
委嘱:公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
TOKYO BORDERS TRAVEL SKETCH: The Seven Deadly Sins
(マイノリマジョリテ・トラベル公演 「東京境界線紀行『ななつの大罪』)
[2006, Japan] site-specific performance, audience participatory theater
2005年、マイノリティとマジョリティの境界線に挑むアート・アクション・ユニット「マイノリマジョリテ・トラベル」を設立し、以来主宰をつとめる。2005年度は羊屋白玉(演出家)と三宅文子(プロデューサー)をパートナーに迎え、明治安田生命社会貢献プログラム「エイブルアート・オンステージ」の助成をうけて「東京境界線紀行」プロジェクトを開催。「障害」と「健常」の二元論的な枠組みに疑問を投げかけ、「自らの特徴や背景のマイノリティ性によって社会生活において障害を経験したことがある」人々を公募。アウトリーチとオーディションを経て、異なる身体障害や、精神障害、性同一性障害、摂食障害、アルコール依存症を自覚するメンバーや、セクシュアル・マイノリティ、在日外国人、路上生活者、三味線奏者など、多様な参加者が集まった。メンバーとともにキャラバンを組み、それぞれが属するコミュニティを訪ねあってアイデンティティの境界線を跨ぎながら東京の複層を旅した。この半年間の共同体験から舞台作品を創作。東京都交通局の協力を得て都バスを貸し切り、バスの中、ストリート上、劇場の中で起こる三部構成の公演「東京境界線紀行『ななつの大罪』」を2006年4月に発表した。観客とともに様々な境界線を旅する体験型のツアー・パフォーマンスを通して、自己と他者を識別するアイデンティフィケーションの普遍性を示唆し、日々無意識に行っている差別の過程を可視化した。
初演・会場:2006年4月 東京都バス、SpaceEDGE、ほか(東京)
Upacara Bayu Ruci: Making Love with the Winds of Solo
(ソロの風と愛を交わす)
[2004, Indonesia] site-specific performance, audience participatory ritual
中央ジャワのラウー山頂にあるスクー寺院遺跡にて、五感を通して風神と交合う観客参加型の儀式パフォーマンスを企画。カランガニャール地方政府観光局とスプラプト・スリョダルモ(瞑想家)の協力を得て、作曲、演出を含む総合監督を務めた。ソロ市のガムラン楽団や古典舞踊家、美術家、そして山上の遺跡周辺に住む村民たちとの3ヶ月に渡る共同作業を経て、数百人の観客と共に9月に執り行った。
振付:岡戸香里 / 美術:ダリル・ウィルソン
楽器編成:ガムラン、風鈴、声、ほか
演奏:クラス・タンパ・エス・ガムラン楽団
踊り:岡戸香里、THスリ・クルニアティ、リアナ・エンジェルノヴァ、小林英恵
初演・会場:2004年9月 スクー寺院(カラガンニャール、インドネシア
Lagu Tanabata Tetanggaku(となりの七夕唄)
[2004, Indonesia] site-specific performance
アジア各国の星にまつわる神話、そして絵巻物や語りといった民俗芸能についてのリサーチをもとに、七夕を軸とした日本インドネシア文化交流プロジェクト「七夕フェスティバル」を企画。現地のアートNPOと協同でワークショップ/展示/コンサートを開催した。急激な都市化に伴い世代間や民族間のズレが深刻になりつつあったバンドゥンにおいて、子供達と街を巡るフィールドワークを行い、拾い集めた素材から楽器を作り、「Lagu Tanabata Tetanggaku(となりの七夕唄)」を作曲、子供達の演奏で発表した。
楽器編成:創作楽器、声
演奏:ジェンデラ・イデの子供たち
初演・会場:2004年7月 トコ・ブク・クチル(バンドゥン、インドネシア)
主催:Bandung Center for New Media Arts
Play of the Winds (風遊ぶ)
[2000, U.S.A] concert music
楽器編成:フルート、ミュージカル・ソー、ティンシャ
A Murmur (つぶやき)
[1999, U.S.A] concert music
楽器編成:オーケストラ(2000年ラージ・アンサンブルのために編曲)
Allison’s Journey (アリソンの旅路)
[1999, U.S.A.] concert music
楽器編成:弦楽四重奏
アリソン・ロックウェル振付舞踏作品「Falling, Floating & Hanging」のために作曲
The Dance of A Tree God(樹の神さまの踊り)
[1998, U.S.A.] concert music
楽器編成:ソプラノ、プリペアド・ピアノ、チェロ、シンギング・ボール
(2004年、ソプラノ、プリペアド・ピアノ、チェロ、ボナンのために編曲)
Soliloquy for a Lover I & II(恋人のための独白I & II)
[1997, U.S.A.] concert music
楽器編成:アルト・サックス
Emily’s Death and Emily’s Blue (エミリーの死と碧)
[1996, U.S.A.] concert music
楽器編成:ソプラノ、ピアノ
Filter Works:
© Tomoko Momiyama