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The Zoo, the Ship, and the Beggar(動物園と船と物乞いのお話)

[2012, Indonesia] site-specific performance
  • The Zoo, the Ship, and the Beggar_excerpt
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  • Tomoko Momiyama
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ボロブドゥールでは、1970年以降、史跡公園整備のために寺院周辺の住民たちが強制的に立ち退きを迫られた歴史があり、今もなお村民たちの間で利権をめぐる衝突が絶えない。特に、土地を奪われた村民同士、そして何世代にもわたってそこで生活してきた住民と新たに移り住んできた人々との対話が緊急課題である。現地での聞き取り調査の際によく耳にしたのが、史跡公園として塀で囲まれる前まで地元の子供たちはボロブドゥール寺院を庭として遊んでいたという話。子供たちは寺院のレリーフの雄大な世界を話し相手に育ち、市場で働く女性たちも畑で働く男性たちも寺院を目印に自分の場所を知り、地域の人々はみな寺院で出会ったという。つまり、ボロブデュール寺院は人々のアイデンティティの根幹であった。ところが現在、寺院は人々の目の前にあるにも関わらず、塀を境に生活から隔離され、観光収入は地元コミュニティにほとんど還元されていない。

 

そこで、史跡公園を囲む塀の目の前に位置する幼稚園Bhumi Indriaの協力を得て、異なる宗教や家族背景をもつ子供たち(3歳から6歳) 25人とともに、一時的ではあるものの、庭としてのボロブドゥール寺院を取り戻す試みを行った。塀を超えて遺跡を訪ね、レリーフに語りかける遊びから生まれた物語は、3つ。「王様、動物園に行く」、「南への航海」、そして「王様と物乞い」。さらに、日常生活の身の回りの音を探して声で再現するワークショップを行い、一日の4つの時間帯、「朝」、「昼」、「夕」、「夜」のヴォイス・オーケストラを創った。また、村で出会ったバイオリン奏者の兄妹(11歳と15歳)のためにバイオリン二重奏のパートを作曲した。一夜を通して行われる中央ジャワの伝統芸能、ワヤン・クリット影絵芝居のガムラン音楽を引用し、夕暮れから夜明けまでのモード(padhat)を逆行する音楽である。

 

時間軸を自由に行き来する空想の物語と、現実の日常時間の音環境、そして時間を逆行する抽象化された音楽。ボロブドゥール寺院に体現される三界の思想のように、異なる次元の時間を内包するこれら3つの層を編み込み、「動物園と船と物乞いのお話 (The Zoo, the Ship, and the Beggar)」を作曲した。